アルミ溶接の加工が難しい理由とは?基礎知識から解決策まで徹底解説
アルミニウムは、軽量で耐食性が高く、さまざまな製品に利用される優れた素材ですが、溶接が非常に難しいことでも知られています。
特に溶融点が低く酸化しやすい特性から、アルミ溶接には高度な技術と経験が求められ、加工業者の選定が重要です。
本記事では、アルミ溶接に関する基礎知識から、上手に行うためのポイント、さらに信頼できる加工業者を選ぶ際のチェックポイントまでを徹底解説します。
もし「他社で断られたアルミ溶接案件を任せられる業者が見つからない」「アルミ溶接の難しさと対策を理解したい」と感じている方には、特に参考になる内容です。

アルミ溶接が難しい理由とその対策
アルミニウム合金の溶接が難しい理由はいくつかあります。
1. 酸化被膜の存在
アルミニウムの表面には、自然に酸化アルミニウム(Al₂O₃)の薄い層が形成されています。
この酸化被膜は非常に硬くて融点が高く(約2,050℃)、アルミニウム自体の融点(約660℃)よりもはるかに高いため、溶接中に完全に除去する必要があります。
この被膜が残っていると、溶接不良(接合不良や欠陥)が発生します。
対策として:
- ・アルゴンやヘリウムなどの不活性ガスで保護しながら溶接を行う(TIG溶接やMIG溶接)。
- ・溶接前に機械的または化学的に酸化被膜を除去する。
- ・交流TIG溶接のクリーニング作用を利用する。
2. 熱伝導率の高さ
アルミニウムは熱伝導率が非常に高いため、熱が急速に拡散してしまい、溶接部に必要な熱量を確保しづらいです。これにより、適切な溶融池が形成されにくくなります。
対策として:
- ・高出力の溶接装置を使用する。
- ・ワーク全体を適切に予熱することで熱の拡散を抑える。
3. 線膨張係数の高さ
アルミニウムは線膨張係数が高く、溶接中の急激な温度変化で大きく変形したり、内部応力が発生しやすいです。この結果、歪みや割れが発生することがあります。
対策として:
- ・溶接の順序を工夫して歪みを抑える。
- ・適切な溶接パラメータを設定する。
4. 特定の合金の溶接性の低さ
アルミニウム合金は純アルミニウム、耐食性アルミニウム合金(5XXX系)、高強度アルミニウム合金(2XXX系、7XXX系)などに分類されますが、特に2XXX系(アルミニウム-銅系)や7XXX系(アルミニウム-亜鉛系)は溶接性が低いです。
これらは溶接後に脆化しやすく、熱影響部で強度が著しく低下することがあります。
対策として:
- ・溶接が困難な合金にはボルトやリベット接合を選択する。
- ・溶接後の熱処理(溶体化処理や時効硬化)を実施する。
5. ガスの吸収性
アルミニウムは溶融状態で水素を吸収しやすく、これが冷却時に気泡を生じる原因となり、溶接欠陥(ピンホールや割れ)を引き起こします。
対策として:
- ・溶接材料の乾燥や清掃を徹底する。
- ・不活性ガスを用いた適切なシールドを行う。
アルミニウム合金の溶接は、酸化被膜、熱伝導率、線膨張係数、特定合金の溶接性の低さ、ガス吸収性などの問題を克服する必要があります。
適切な溶接手法や事前処理、設備の選定が非常に重要です。

溶接に代わる接合方法の検討
必ずしも溶接が必要でない場合もある
溶接が困難な場合やコスト削減が求められる場合には、必ずしも溶接を選択する必要はありません。
接合という観点から、アルミ同士を固定する他の方法を検討する価値があります。
接合方法の代替案
アルミ溶接の代替として、POPブラインドリベットが有効です。
数量や条件による溶接方法の選定
連続溶接すると歪が発生し、反り直しが不可能な場合があります。断続溶接を検討する必要があります。
アルミの種類とその溶接特性
1000番台(純アルミニウム)
例 | A1050 |
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特性 | 純度が高く、柔らかいため加工性に優れています。 |
溶接性 | 向いています。 ですが非常に柔らかい材料のため、軽い接触でも傷ついてしまいます。 |
2000番台(銅を主成分とする合金)
例 | A2017、A2024 |
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特性 | 高強度で航空機部品などに使用されます。 |
溶接性 | 不向きです。 |
5000番台(マグネシウムを主成分とする合金)
例 | A5052、A5083 |
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特性 | 中程度の強度と優れた耐食性を持ち、船舶や車両部品に使用されます。 |
溶接性 | 精密板金加工の母材としては最も一般的で、切断、曲げ、溶接のいずれも加工可能です。 |
6000番台(マグネシウムとシリコンを主成分とする合金)
例 | A6061、A6063 |
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特性 | 中程度の強度と良好な耐食性を持ち、建築材や構造材に使用されます。 |
溶接性 | 不向きです。 |
7000番台(亜鉛を主成分とする合金)
例 | A7075 |
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特性 | アルミ合金中で最高の強度を持ち、航空機やスポーツ用品に使用されます。 |
溶接性 | 不向きです。 |
アルミ溶接の最適な溶接方法
TIG溶接の特徴とメリット・デメリット
特徴 | 高い精度が求められる溶接に最適で、酸化皮膜の除去が可能。 |
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メリット | スパッタの発生がなく、高品位な溶接仕上がりが得られる。 |
デメリット | 技術が必要で、作業時間がかかることがある。 |
半自動溶接の特徴とメリット・デメリット
特徴 | 厚い板材や生産性が求められる場合に適した方法。 |
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メリット | 厚板を強固に溶接する場合に有効。 |
デメリット | 酸化皮膜が発生するため外観品には適していない。精密な精度を要求される部品には不向き。 |

まとめ
アルミ溶接は、その溶融点の低さや酸化皮膜の影響、熱伝導の高さといった特性から、非常に難易度が高い加工技術です。
しかし、適切な溶接方法や機材の選択、経験豊富な業者のサポートを得ることで、高品質な仕上がりが可能です。
本記事で紹介した基礎知識とポイントを参考にしていただくことで、アルミ溶接の成功に一歩近づけるでしょう。
溶接の難しさを理解しつつも、アルミ溶接の課題に対応できる信頼できるパートナーを選ぶことが重要です。
高度な技術と実績を持つ当社が、確かな品質で対応いたします。
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